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工学専攻学生的SF映画評論 第一部

  • 2008-07-02 (水) 23:21
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冬に出した感覚基地のフリーペーパーに、タイトルの通り『工学専攻学生的SF映画評論 第一部』という読み物を掲載しました。
もうすぐ次のフリーペーパーを出すということなので、後悔公開しておきます。

おそらく情報工学、特にヴァーチャルリアリティ界隈を専門とする学生からみれば一般論ではあります。ただ、このような文章を映画館に配置し、全く関係のない人の目に触れさせるということで何か見えてこないかなあということで書いてみました。感覚基地のフリーペーパーは実際に近畿を中心とした映画館に置かせていただいているのですが、反応は果たしてわかりません。でもそこがウェブとは違う、アナログで一方通行なメディアの愉快さであり味であると最近は思います。
一方通行なメディアは必要ですよ。残さないと駄目です。僕がどこにどういった愉しさを感じているのか、今はまだ言葉になりませんが、僕が愉しさを感じているらしいということは確からしいと、僕は言っています。

ちなみに第二部を書く予定はありません。
以下、本文。

- - - -

 『マイノリティ・リポート』(スティーヴン・スピルバーグ)でトム・クルーズが両手で操るジェスチャ式の入力システムは、インタフェース関連の研究分野に夢と希望とビジョンを与えた非常に意義のある作品であった。映画の内容はさっぱり覚えていないが、本来は実体を持たない情報という概念が球体という我々が実体として知覚できる形で提示されるシーンなども、MITメディアラボ・石井裕教授の提唱する「タンジブル・コンピューティング」を連想させる。事実、この球体で情報を表現するというアイディアは、関連研究の論文にヒントを得ているという。一方で、世の研究者に対する言い訳か、ジェスチャ認識用途と思われるデータ・グローブの存在が微笑ましい。トム・クルーズがグローブを装着するシーンが、この映画の一番のニヤけどころである。

 また、スピルバーグの『A.I.』が見せたCG技術はロボット工学における「不気味の谷」という現象を見事に利用した、工学的にも面白い作品である。不気味の谷とは、人間のロボットに対する感情的反応に関する概念である。ロボットがその外観や動作においてより人間らしくなるにつれ、人間はロボットに対してより好感的になっていくが、ロボットの人間らしさが高くなり続けるとある時点でその感情が突然強い嫌悪感に変わる(谷に落ち込む)という現象が観測される。

 『トイ・ストーリー』(ジョン・ラセター)のキャラクタはそこそこに人間らしいが本質的には玩具であるため不気味さを感じることは少ない。一方で、最近メディアへの露出が増えてきた、CG映画版『ファイナルファンタジー』(坂口博信)など20世紀末に製作された「人間らしい」ことが売りのCG作品を目にしたときの言いようのない不快感が、不気味の谷に落ち込んでいる状態である。『ロード・オブ・ザ・リング』(ピーター・ジャクソン)のゴラム、『ブレードランナー』(リドリー・スコット)や『イノセンス』(押井 守)におけるアンドロイドなど、不気味の谷という観点から見ると新たな知見が得られる作品は多い。不気味の谷現象のメカニズムについて、詳しくは各自検索して調べるように。

 『攻殻機動隊S.A.C』(神山健治)においてタチコマがゴースト(自我・意識)と個性とを獲得する過程など、人工知能工学の研究者にとっては鼻血ものだろう。タチコマAIそのものが並列型マルチエージェントシステムを成しているだけでなく、複数のタチコマたちがネットワーク上の仮想空間で議論するシーンなどニューラルネットワーク(脳内の神経細胞が構築するネットワークの総称)の視覚化に他ならない。スピルバーグの『A.I.』が獲得した感情とタチコマのゴーストとの対比も面白いが、どうやらそろそろ紙面が尽きてしまうようである。

 ぼくは感覚基地メンバーでありながら、情報工学を専攻する学生でもある。というか、実はそちらがメインである。『電脳コイル』(磯 光雄)や『攻殻機動隊』(押井 守)でおなじみの、現実空間上にディジタル情報を浮かび上がらせる技術のことを「拡張現実感技術(Augmented Reality: AR)」という。ぼくは今、学生としてこの分野の研究を進める些細なお手伝いをしている。控えめに言って、楽しくて仕方がない。SF映画作品をより楽しみたいのならば、工学を学ぶことをおすすめする。テクノロジーが見せる未来を愛するぼくたちの目標が、SF作品の現実化にあることは言うまでもない。

Comments:2

wい男 08-07-09 (水) 23:16

本文の第三パラグラフの『イノセント』(押井 守)
は「イノセンス」ですね、わかります。

masayashi 08-07-17 (木) 15:18

指摘ありがとう!恥ずかしい…!

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